「うるし」に猫が突っ込んだ!

以前の事ですが

工房の中を実家の飼い猫の一匹がこっそり探検。

おっかなびっくり、抜き足差し足。

何の気なしに声をかけて

「こらこら、仕事場はいったらあかんよ~!」と、言った瞬間、

ばれた!!とばかりに、ダッシュで逃走!!

 

ジャンプ!!

着地!!

 

べちょ!!

 

「うるし」の入った桶に両前足でズボ!!

(その間約2秒)

 

さらに混乱した彼女はそのまま走り回り・・・。

工房内も黄色の漆で猫の手ハンコが床にも壁にも・・・。

 

10分後確保された彼女は漆のついた毛をバリカンでかりとられ

みじめな姿に。

 

 

1日後、取り切れなかった「うるし」にかぶれ

全身カブレ・・・

端正だった顔がブルドックみたいな顔に・・。猫なのに。

 

2週間後なんとか腫れも引いて元の姿に(毛は半年近くかかりましたが・・)

 

 

彼女はそれでも懲りずに僕の仕事を見に来ているのか

工房には覗きに来ておりましたが

二度と漆には手を触れないようにか、

作業中は遠くから眺めているようになりました。

 

 

「うるし」をきれいに塗るためには?

「うるし」の工程に上塗りというものがある。

なかなかにむつかしい。

やればやるほど、難しい。

特に最初のうちは、埃が入ることが多く、どうしたらよいのかと悩みまくる。

 

若いころ、おもいきって大先輩にきいたことがある。

「どうやったら、そんなに埃もなく、きれいに塗れるんでしょうか?なにか、工程を見落としているんでしょうか?」

 

答えはシンプルで、直球だった。

 

 

 

「埃が無くなるまでがんばったらええんや。」

 

 

 

そりゃそうだ!

 

あれから自分なりに出来ることは増えたがいまだに簡単とは言えない。先輩の背中はいまだ大きい。

「うるし」で作品作り

京都を離れていた時、恩師と勝手に仰ぐ一人との呑みながらの思い出にこんな会話があった。

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みきよ~。

「うるし」で物を作るとき

色々な言葉で分類することができるな。

「うるし」の製品

「うるし」の商品

「うるし」の作品

「うるし」の工芸品

「うるし」の美術品

他にもいろいろあると思うのだが

このなかで一つだけ品の使い方違うものがある。

 

作品は「作った品」ではなく「品のあるものを作る」

もしくは「品格を作るという作業の中で育てる」

上手く言えんが、そういう考え方もある。まあ、お前が京都に帰ったら

お前なりに捉えたことを伝えてくれ。

先輩に恩返しは出来んから、後輩に恩返しかな?うまい事、言えんな。

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そうか~。なるほど~。僕は後輩にはいまだ上手く伝えれていませんが

僕の中では、20年近くたった今も心に残っています。

 

また先生、呑みましょう!